最優秀賞

ふる里に寄す
　　　　　　寺坂　美弥

 

わたしのふる里は
お母さん
あなたです

あなたの中心の小さな宇宙にある
小さなふる里で
わたしは　小さなくらげでした
あたたかな海の中で
海鳴りを聞きながら
ゆらゆら　漂っていたのです

そんなある時のことです
私の前に
細い　細い　道があらわれたのは
その道を通って
わたしは　眩しい世界のただ中へと
送り出されたのです

だから
お母さん
あなたはわたしに
道を開いてくれた人

お母さん
あなたもかつては
その道を通って
この世界に来たのですね
その前も
そして　またその前も
はるかな昔から—

いつか　わたしも
まだ見ぬ小さな者のために
道を開く時が
来るのでしょう
その後も
そして　またその後も
はるか未来へと—